動揺
「……!」
亜季の顔に動揺が彩られる。
「さっきの問いに答えていなかったね」
史記は淡々と機械的に答える。
「私も、過去に君達と同じ様な現象に遭遇したからだよ」
雨は、三人の静寂を切り裂くように降り続けた。
「……黒霧先輩も?」
史記はゆっくりと頷く。
「私の時は、『一日ずつ時間が遡る現象』だなんて言う、フィックションのような体験だった」
彼女の瞳に感情は無い。
「それにどうして私達が関わっていたのかはわからない。事件に遭遇している時に知っていたのは、それが妖精の仕業だということ」
「妖精?」
鸚鵡返しのように淳司が呟く。
「ええ。はっきり言って、本当にきちがいなお話よ。私達がどうやってその信じられない現象を解決出来たかはわからない。何故って、他の四人の記憶共々、妖精に記憶を奪われたから。でも何故か妖精のことだけは覚えていた」
亜季は怪訝な表情でそれを聞いている。事実かどうか判断しかねているようだ。
「妖精から記憶を取り戻す為に、私は色々な土地で自分と同じ様な現象に遭遇した人達の体験を聞いた。さっき言った『時間』の現象についてはその体験談に基づくもの。ほとんど眉唾ものの話ばかりだったけど、自分の記憶を取り戻す為には藁にもすがる思いで私は情報を集めた。妖精に会う為に」
「それを、信じろと言うんですか?」
「信じて欲しい」
「亜季、先輩の言うこと、多分本当だ」
信じられない、といった声質で亜季は尋ねる。