妖精
亜季は妖精という得体の知れないものに、自分が動かされていることに明らかに不満をもっているようだ。
淳司は淳司でぼう、としている。話が理解可能の範囲を超えてしまったのだろう。
「ここで重要なのは、妖精がどんな物語を望んでいるか。彼等の思惑と違う方向に言ってしまうと、かなりまずいことになるみたい」
私のように、何かを奪われてしまうかも、と史記は言う。
「黒さん、その……具体的にはどうすればいいんすか?」
淳司の問いに、
「……私にわかることは、実は少ないんだよ」
ぼやくように史記は呟く。
「妖精は物語を紡ぐ。そしてそこには必ず読む者が共感するような事柄が挿入されている。小説とか、テレビとか見ててないかな?登場人物に感情移入してしまったり、物語の背景に感動したり、怒ったり」
淳司はあるある、と頷く。
「まずはそこを知る事。さっき言った『妖精がどんな物語を望んでいるか』という事はこれのこと。そしてその通りに行動を起こす」
「先輩、一つ疑問があります」
亜季は考え込むように腕を組んでいる。
「最初から決められた粗筋通りに登場人物が動いても、読者はともかく、書いている筆者自身は面白いと感じないのでは?この場合筆者は妖精なんですから」